60歳で定年退職した場合、給与所得と公的年金所得は62歳まで支給されないので、62歳までは企業年金、個人年金、失業保険の3つが私の収入です。単純計算すると家族の扶養になれないので、収入調整を行います。
失業保険受給中の対応
失業保険は所得税はかからないものの、社会保険の面では収入として扱われます。
失業保険受給中(5ケ月間)は収入金額が年収180万円(65歳未満は130万円)以上になるので家族の扶養には入れません。そのため、健康保険は会社の任意継続被保険に加入し、その保険料(43,648円)を5ケ月間支払い、その後なら家族(カミサン)の扶養になれる可能性はあります。(家族の扶養になる収入金額の判断は、年間収入合計でなくむこう数ケ月の収入見込額です)
家族(カミサン)の扶養になる
【扶養になれる収入要件】
「年間収入が130万円(60歳以上、あるいは一定の障害者の場合には、180万円)未満で、かつ、被保険者の年収の2分の1未満であること」そのため、失業保険給付終了後の収入金額が180万円未満でなければカミサンの扶養に入れず、社会保険(健康保険料等)の支払義務が生じます。
【税法との違い】
社会保険の収入額は単純に収入額の合計額です。個人年金は必要経費として支払った個人年金保険料は控除できません。また、企業年金も必要経費としての公的年金控除額を差し引くことはできません。
これに対して、税法では所得(収入金額-必要経費)という考え方で課税標準を計算し収める税金を計算します。従って、個人年金は必要経費として支払った個人年金保険料を控除した金額、企業年金も必要経費としての公的年金控除額を差し引いた金額を所得としてとらえます。
また、失業保険の収入はどちらも収入金額に算入する必要はありません。
【収入金額の合計額】
60歳から企業年金と個人年金を受給した場合、
社会保険の収入額の合計額は2,603,200円>1,800,000円になり、
家族の扶養になることはできません。
【収入金額の調整】
家族の扶養になるため、失業保険給付終了後の収入金額を年収180万円未満にする調整を行います。企業年金の第一年金(435,300円/年)と個人年金は受給開始日を繰延ベができるという制度を利用して公的年金受給開始時期(62歳)を遅らすことができます。
具体的には、企業年金の第一年金(435,300円/年)と個人年金の月払い(20年確定と15年確定:504,000円/年)の受給開始を繰延します。その結果、60歳から2年間の
収入額の合計額は1,663,900円<1,800,000円になり、
家族の扶養になれる可能性がでてきました。
【高かった収入で計算される国民健康保険料】
60歳で定年退職した場合、高かった収入で計算される国民健康保険料は平成30年3月までの18ケ月間支払わなければなりません。
詳細は「嘱託社員継続せず60歳で退職した場合の健康保険の選択肢」を参照ください。
■ 国民健康保険料の18ケ月分=68,940円×18ケ月=1,240,920円
■ 任意継続被保険の18ケ月分=43,648円×18ケ月=785,664円
■ 繰延個人年金の18ケ月分
=(435,300円/年+504,000円/年)÷12×18ケ月=1,408,950円
家族の扶養になった場合、会社の任意継続被保険の18ケ月分支払額785,664円が節約でき、繰延個人年金の18ケ月分(1,408,950円)の約56%になります。任意継続被保険は一度脱会すると再加入はできないので国民健康保険に加入することになります。
感 想
この繰延作戦は、カミサン年収50%と180万円を比較して少ない金額に達するまで調整すれば成立します。ただ、カミサンに平成30年3月までの労働を暗に強要する(約78万円のために18け月間を拘束)ことになるので採用についてはカミサンとの話し合いで決めようと思います。